「ごめんなさい。終わり終わり。この話はもうこれでおしまい」
慌てて笑顔を作ります。
『海よりもまだ深く』
この映画のタイトルは、劇中でテレビから流れるテレサ・テンの『別れの予感』の歌詞の一部であり、子を想う親の愛である・・・ように思います。
シャツにはねたカレーうどんの汁を拭いてやる淑子。
子がいい歳の大人になっても、親にしてみれば
いつまでも《子供》なんですよね(*´ー`)
良多はというと、すべてが自業自得であるにもかかわらず、
「こんなはずじゃなかったんだけどなぁ・・・」
と、まるで他力によってこうなってしまったがごとくつぶやきます。
仲を悪くしたまま永別した父親のこと。
思うように行かない仕事のこと。
元に戻れない妻子のこと。
母をずっと団地住まいにさせてしまっていること(母は団地から出たがっていました)。
良多には、その何もかもが《こんなはずじゃなかった》のです。
冒頭で書いたように、この映画は劇的な何かが起こるわけではありません。ですので、つまらないと感じる人も多いかもしれません。でもぼくは、なんだかしみじみしたのです。人生って大多数の人が多少なりとも、
どうしてこんなことになっちゃったんだろう・・・とか、
こんなはずじゃなかったのに・・・という思いを抱えながら歩んでいると思うからです。
興味ある人はご覧になって欲しいのですが、
こんなはずじゃなかったと言えば、
チーズインのかわいい顔型のパンを焼くはずだったのに・・・