2020-04-19
劇的な何かが起こるわけでもないのに、味わい深いリアリズムがある、是枝監督の《是枝らしさ》が詰まった映画です。
『海よりもまだ深く』(2016年)
良多(阿部寛さん)と響子(真木よう子さん)は、元夫婦です。
離婚した理由は、良多が非現実的な夢を追い求めているうえに、ギャンブル好きだし、不真面目だしで、ま、離婚されるのもやむなしの人間だからです。
良多のいまの楽しみはというと、月に一度だけ息子の真悟と会えることですが、養育費をきちんと支払わない(支払えない)ために、響子からは、
「もう真悟と会わせないから」
と、毎回のように言われている有様。
良多はというと、どんなに厳しく言われても、まだ響子に未練があり、できればまた親子3人いっしょに暮したいと願っています。
なのですが、
ちょっと金が入れば、それをすぐさま養育費に回さず、もっと大きくしてやろうとばかりにギャンブルに注ぎ込むし(そしてそれは当然なくなってしまいます)、
その結果、
いい歳をして、職場の後輩や、姉の千奈津(小林聡美さん)や、母の淑子(樹木希林さん)にお金の無心をしているという情けない現状なのです。
それに、
もしも良多が改心していたとしても、響子の良多への想いは冷め切っていますし、響子はただいま高収入の男性と交際中なのでした。
物語のクライマックスに、そんな元家族が、台風接近のために、淑子が住む団地でいっしょに一晩を明かすことになるのですが・・・。
台風の夜、
淑子は響子と話していて、突然に・・・
「あなたたち、もうほんとにダメなの?」
もう離婚してしまっているのに、そう訊きます。
「こう言ってはなんですけど、良多さん、家庭を持つのに向いてないと思います」
響子の気持ちが揺らぐことがないのを知った淑子は・・・
「どうしてこんなことになっちゃったのかしらねぇ・・・」
と涙し、すぐに、
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